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読書感想文『怖い絵』

大塚美術館に行きたくなってきた
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・読みやすさ
★★★★☆
・恐怖度
★★☆☆☆
・大どんでん返し度
★☆☆☆☆
・感動度
★★☆☆☆
・総合評価
★★★☆☆



中野京子先生の膨大な知識量には感服する。
さらにその情報を、驚くほど分かりやすく文章に起こす才能に、またも感服。
1枚の絵に込められた時代・思い・謎・・・そして恐怖をえぐり出し、読者に提供する手腕は見事というしかない。


僭越ながら、私も絵画は好きだ。
知識も毛が生えたくらいは持ち合わせているつもりではあった。しかし中野先生に比べれは、ノミレベルです。




20点の作品で、個人的に恐怖を感じたのが


エドガー・ドガの「踊り子」です。


ドガの作品にはバレエを扱った主題、ことに楽屋や練習風景、舞台袖といった一般人では出入りできない場所での場面を描いたものが多いのですが、それは当時のバレエというものが現代とはあまりにもかけ離れた社交場だったとは知りませんでした。


舞台上で、細く白い手を伸ばして踊る少女。
それを舞台袖で見ている黒服の男性。

この構図は初見だと、支配人が踊り子を舞台袖で見ていると考えますが実際は違う。




その理由を知ると心底「ゾッ」とします。

時代のドス黒い部分を切り取ったドガの洞察力。そして悲哀。天才の筆は見事に描いています。



1点1点を丁寧に説明してくれる中野ワールドにすっかり魅了されました。
怖い絵シリーズは人気となり、続編も大人気。

こうして・・・


この目で確かめたい!という欲求に駆られるという、オマケが付きました。


大塚美術館に再訪したいわ。


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テーマ : ブックレビュー
ジャンル : 小説・文学

読書感想文『看守眼』

物足りなさを感じるも良質に変わりはない
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・読みやすさ
★★★★☆
・恐怖度
★★☆☆☆
・大どんでん返し度
★★★☆☆
・感動度
★★☆☆☆
・総合評価
★★★☆☆


<あらすじ>
刑事になるという夢破れ、留置管理係として職業人生を閉じようとしている、近藤。彼が証拠不十分で釈放された男を追う理由とは(表題作)。自叙伝執筆を請け負ったライター。家裁調停委員を務める主婦。県警ホームページを管理する警部。地方紙整理部に身を置く元記者。県知事の知恵袋を自任する秘書。あなたの隣人たちの暮らしに楔のごとく打ち込まれた、謎。渾身のミステリ短篇集。


横山秀夫、お得意の「警察モノ」は少しだけ。
普通の人々が織りなす闇を描いた作品が並ぶ短編集です。
各章、スロースタートなのですが一気に加速して終焉を迎える着地の筆力は流石だなと唸る。



看守眼
表題作だけあって、やはり一番読みごたえがあった。
看守で培った洞察力が、事件の真相を暴く・・・のではないかという終わり方が心憎い!



自伝
怠惰な人生を送る主人公ライターが、一発逆転に賭けた結果は・・・
私の中ではこのオチに納得です。欲は人を滅ぼす。



口癖
重い・・・
重い内容です。そんなことあるか?ってことも横山が書けばリアルになる。口癖は気を付けよう。




午前五時の侵入者
警察モノが再び。
署のHPがハッキングされ、犯人を捜す・・というよりは保身に回る警察署のドロドロがメインかも。




静かな家
これは微妙でしたね。
出版業界の大変さは重々にわかるけど、主人公に共感できなかったのがイタイ。




秘書課の男
男が男を妬む話。
職場においては実は女よりも陰険なのかもしれない。男が仕事に賭けるプライドは女の比ではない。


殺人事件があれば、家庭の主婦の話もありバラエティに富んでいるのは嬉しい。それに読みにくいということもありません。
けれど、横山秀夫の重厚感たっぷりな世界に入り込むなら物足りないです。
同じ短編でも「第三の時効」の後だから、余計にそう感じてしまいました。



私、病院の待合室で看守眼の章を読んでいたのですが、盛り上がってきたところで名前を呼ばれてしまいました。
先生と話中も続きが気になって(笑)
さすが表題作。


テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

読書感想文『葉桜の季節に君を想うということ』

2時間ドラマを観てるよう
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・読みやすさ
★★★☆☆
・恐怖度
★☆☆☆☆
・大どんでん返し度
★★★★☆
・感動度
★☆☆☆☆
・総合評価
★★☆☆☆


<あらすじ>
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。
-BOOKデータベースより-


読書好きの方にお借りした歌野作品。
前回レビューした「密室殺人ゲーム王手飛車取り」が自分の好みでなく、幾分の不安があったものの、こちらはかなりの有名作品。受賞歴も多数だし、今回は大丈夫かなとページをめくっていきました。


序盤から「射精」スタート(゚△゚;ノ)ノ シャセー
性描写苦手な人は引くね。
主人公のセックス談義を数ページ読まされることになる。いくら買った女とは言え、「売女!!」と罵る主人公に共感できねーわ。大丈夫か、この小説・・・。


ただ凄いのはね・・・




作者は主人公の性癖を冒頭で描くことで、すでに読者にトリックを仕掛けていたこと。


叙述トリックの最高峰だと賞賛されるのはわかるけど、マジで1行目からトリックです。それが二重にも三重にも仕掛けられてるんだから読者包囲網もいいところ。作者の並々ならぬ意気込みを感じる。それは怖いくらいに。


だから読者様の中には「違和感」を感じる人もいたようです。あのシーンはおかしいとか、台詞が変とか。
私だってこの長編を読み進めると「ん?」と指が止まるページがありました。

主人公の妹の台詞です。

「友達のお見舞いに行くの」


これ、指摘してる人いないけどおかしいなぁって思ったんだよなぁ。さすがです、見抜けなかった!


大どんでん返しのため映像化はほぼ不可能でしょう。
まず冒頭の射精シーンは難しいよなwww

何より読者を驚かすネタバレを何個用意してんだ?ってことです。
「え?」
「ちょっと待って?」
「待って待って待ってーー!」


読後、グッタリを覚悟しましょう。


テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

読書感想文『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

不快過ぎる
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・読みやすさ
★★★☆☆
・恐怖度
★★★★☆
・大どんでん返し度
★★☆☆☆
・感動度
★☆☆☆☆
・総合評価
★★☆☆☆



<あらすじ>
”頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである。リアル殺人ゲームの行き着く先は!?歌野本格の粋を心して堪能せよ。
-BOOKデータベースより-



発想は面白い。
面白いが、よくこんなことを思いつくなというのが正直な意見。ハッキリ言うと不快。自分の殺人を推理形式するのはいい。机上であればの話ね。しかし殺人は事実だし、それを実行した彼らがまったく反省の色を見せない。反省したらこの推理は成り立たないけどね。どうも不快が先行して、彼らと距離を置いて読んでしまう。

特に最初のaXe(アクス)がおこなう殺人にはマイッタ!
最初の話だから余計なんですが、いったい何人殺すんだ?そして警察の愚鈍さよ。



シンプルな殺人から凝った殺人まで。
東京は簡単に人が死ぬし、死ぬことに世間は興味がないのでしょうか。淋しい街です。


彼らの正体が最後の章で明かされます。
やっぱり!という人もいれば「え?」という正体の人も。そして唐突な尻切れトンボのエンディング。

何じゃこりゃ。




続編が出ていますが、ちょっと私は遠慮しときます。
この世界観、向いてなかったwww

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

読書感想文『羊たちの儚い祝宴』

よく練られてるなぁ。
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・読みやすさ
★★★★☆
・恐怖度
★★★★☆
・大どんでん返し度
★★★☆☆
・感動度
★☆☆☆☆
・総合評価
★★★★☆



<あらすじ>
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。


↑↑このあらすじは誘導されるだけ。
5章に渡る短編はあくまで最終章への布石にすぎない。ちなみに公式のあらすじは第一章。
各章すべてに名前が挙がる「バベルの会」も全様は見えず。それがまさかこんな結末を迎えるとは!
本作は筆者の傑作に間違いないだろう。尊敬の念を抱かずにはいられない。



身内に不幸がありまして
まず最初に伝えたいのは、この5章はすべて戦時、または戦後すぐの時代背景だということ。全章共通する「バベルの会」に入会するには、戦後に財を成したお嬢様しかダメという触りをこの章は担っている。
少女2人の独白形式なのだが、1人目の少女が財閥の娘に仕える話。2人目はその娘の話。
2人目に切り替わった途端に急展開するストーリー。開いた口が塞がらない。マジか。たったそれだけで?女は怖い。



北の館の罪人
ミステリアスなお屋敷に仕える、これまた少女の話。
ネタバレではないので言っておくが、全章が主人公である。だから余計に湿度が高いのかも。ねっとりとした絡みつく情念。
この章はファンに人気があるようです。紫の手袋。ああ、なんというオチだろう!


山荘秘聞
これはね・・・スティーブン・キング作品を思い起こさせました。
雪山・遭難・女・・・
ピンッときました?


玉野五十鈴の誉れ
読者がナンバーワンにあげる章です。
うん、確かに面白い!100ページにも満たない章なのに、名家の少女が波乱の人生を送る。ハラハラしっ放しですよ。表題にある玉野五十鈴は、破綻する彼女に使える女中なんです。女中の話が多いですよね(笑)
章の最後にある行を読んだ時、五十鈴の行為は正義なのかと考えさせられる。『はじめちょろちょろ・・・』



儚い羊たちの祝宴
前章の総仕上げですね。
最終章に登場するのは成金の父親を持つ少女の独白。金に物を言わせた父親が雇った女料理人がとんでもない奴だったのです。凄技で次々と絶品料理を仕上げる女料理人。大満足の父親ですが、金持ちにふさわしい料理、すなわち「滅多に食べられない食材」を欲す。その時、娘は父に代わり「アミルスタン羊」を所望する。女料理人は顔色を変えず、承知し食材を探しに出かけるのだが・・・。

ここにきて前章の少女たちの名前が出てきます。成金娘も「バベルの会」の会員。しかし違うのは彼女だけ除名されたこと。

この除名処分が、まさか晩餐に繋がるなんて・・・


誰が想像できようか!!

女料理人が食材を手に入れるシーンは一切描かれていません。しかし、女料理人の仕事ぶりを細かく描写しているシーンがあり、選ばれた食材で一番のモノを食卓に出すのがモットー。つまりそれ以外はすべて廃棄なんです。

アミルスタン羊を手に入れた女料理人。
その事実を知った成金娘。



バベルという言葉、真っ先に思いつくのはバベルの塔だろう。

バベルの会を神に近づこうとする愚かな人間たちの末路に比喩するとは・・・。


あっぱれ。マイッタ。素晴らしい。


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